快適な登山を創造するMountain Guide Seki 110年前の登山入門書を読む                                                                                     

 

明治392月高頭式編纂・発行の「日本山嶽史」を読んでみました



 

                        

 

                       多くの方に読まれた名著ですが、それにしても先人はすごい。現在の登山入門書と

                       ほとんど変わらない原点を突いている。  110年前の本誌に挿入された小島烏水の

      「登山技術」と大平晟「登山の心得」の一部を抜粋してみました。

                       皆さんはどう感じられるでしょうか(茶文字はsekiの現代語コメント )。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登山技術より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ◆(前置として)欧人がアルプス山の爲めにAlpain lubを組織して、苟くも該山に關はれる一切件は、細大洩 さず之を研鑽し、精細なる地圖地質圖は

  出版せられ、動植物の如きも大抵は考察せられ、登山用具としては    「アルプス金剛杖(アルパインウォーキングスチック)」あり、登山に必要なる薬

  品を取り揃えたる

   ヨーロッパでは山岳会が組織化され、そこに登山情報が集約され、地形図も出版され、動植物 もよく観察され、登山用具ではストックが使用され、

  ファーストエイドも揃っている。

 ◆携帯品も普通の旅行と違あるや言を俟たず、併せて山頂の氣候天象等の變化が、人間に及ぼす関係をも研究する用あり、斯の如き準備と注意とは、

  登山の成績に影響すること大なり 

 山では一般の旅行と違って天候の変化には十分に注意しましょう。 

夏秋共に早朝より發し、遅くとも正午迄に絶巓に達するの策を取るべし、或は前夜既に絶巓に近  きところ(七八合目)に宿すれば可なり 

   山は早立ちが基本です。山頂もなるべく午前中に踏んで、余裕を持って行動しましょう。 

地圖 参謀本部陸地測量部出版、二萬分一地形圖、最も精密 

 当時の地形図は未刊部分も多く、中々手に入らなかったようです。今の25,000分の1地形図に相当しますね。 

洋傘 は大抵の旅行晴雨共に必要なれど、登山には断じて携ふ可らず

  傘は平地で使うもので、登山中は決して使わないように。

細引 樹に攀づるとき、斷崖を下りるとき、携行品を一括するとき、洞窟を探檢する際出入の路筋を連絡するとき等 

  細引きは、あれば危急時にとても便利です。 

◆各自専門の器具を携帯すること勿論なり、要するに旅行の秘訣はなるべく携行品を尠くし、一品 にして數品の用途を兼ねるものを選ぶに在り

  登山の必需品は大事ですが、それはなるべく少なく軽くし、いろいろと応用の利く装備が大事です。

罐詰 近来販路大に開け、山間にても少しく人間の聚楽するところには概ね之を見る故に、自宅より像じめ携ふるに及ばず、成るべく山麓に近きところ

   に就いて之を購ふを便とす 

  今風に言うと、この頃は山間部にもコンビニがあるので、なるべく登山口近くで買うと便利ですよ。

昼の食事は一二杯宛食ひ、空腹にならば幾度も少しづゞ食ふべし、大食をすれば道を行きがた 

  登山中のエネルギー補給は、いちどきに食べるのではなく、こまめに摂るようにしましょう。

雲 の聚散を仰視せよ。極めて小さな雲に注目せよ。其雲の大サ次第に減少して、終に消散するときは、是れ晴天の徴候なり、之に反して其雲漸次聚

   合するときは、雨天と見做して可なり

   登山中は雲の動きにも注意しましょう。次第に雲が増えてきた場合は雨の可能性があります。

風 登山中に下界より吹颺するときは山頂多く快晴なれども、之に反して山頂より吹下する時は必ず山上に多少の風雨あるなり、是に於て登山を中止

  し、石室あれば就いて休泊するを智と

   日中谷風、夜中山風であれば天候は比較的安定、逆現象は天候が悪くなる前触れなので 注意しましょう。

 登山に慣れざる人 に注意す。五合目邊より山頂を仰視する時は、意氣昴りて知らず識らず急速に足を前むれども、斯ノ如くんば七合目に到りて呼吸

  迫り、殆ど顛路して起たざることあり、登山は必ず急行す可らず、徐歩すべし、健脚なる可らず、柔らく土を踏むべし、面して

    登山はゆっくり歩き、ドタバタと踏むのではなく、静かにフラットフッティ ン グが基本です。

山頂に到りて微熱あり、或は頭痛となり廔ば衂血することあり、食欲奮はず、(中略)下山すれば必ず直に平癒するものなれば意に介せずして可なり 

  高山病は下山すれば普通治ります。

少数なる場合には悉く之を採ることなく、其中の良種數株残すべし、是れ天下の一品を剿絶に歸せざるに先ちて、保護を加え繁殖を計らしむる道にし

   て、人間が造化に盡くす第一義務なり、徒に之を根絶して、冷酷なる自己功名心の満足を専らにするが如きは鄙しむべき小丈夫といふべし。 動物に

   於いても亦然り

   高山植物を採ってはいけません。稀少まれな高山植物を保護することは登山者の大事な義務です。 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登山の心得より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 登山法の秘訣は、氣を落ち附けて徐行し、地を踏むこと勉めて輕くするにあり、早急闊歩は、登山者の最も戒むべきことゝす(中略)山行

  の經驗乏しきものは、下山を以て甚だ  容易のものとなし、面白みに乗じて急降し、爲に膝関節疼痛を起し、寸歩も運ぶ能はざるに至るも

     の多し、負傷と疲痛との失敗は、登山の際より、寧ろ下山の際にありと知るべし

     登山で最も大事なことは早足にならないこと。怪我は登りよりも下る時に多く発生するので注意しましょう。

 登山の途、食事は少量づつ數度に用ふるを可とす(中略)鰹節は、食物缺乏最後の準備品として携帯すべし、鹽は種々の用途あるものなれば、携帯

  するを可とす 

   山に入ったら食事は少しづつ何回かに分けて食べ、非常食は鰹節が便利で、塩も持っていると重宝します。

山により山腹若くは山上に於いて飲用水に豊なるあり、或いは絶無のことあり、登山者は豫め 之を確め、準備を忘るべからず

    入山前に水場がどこにあるか、予めよく調べておきましょう。

數人の一行急峻なる山逕を進むに際し、往々岩塊落下のため、下方の人に危害を與ふることあり、斜行進其他安全の法を講ずることを要す

     急坂の狭い登山道では落石の恐れがあり、状況によっては斜めに進むなどの安全対策に心がけましょう。

高山幽谷の間は、盛夏猶氷雪を存し、其表面滑らかにして轉倒するとあり、或は下部空洞を存し、之を踏むや忽ち崩墜し、共に崖上より落つるとあり、

    深く警戒すべし

    雪渓は滑りやすく空洞部分もあり、落ちる危険もあるので十分に注意しましょう。

 旅行は、萬事細微の點まで勤めて深く注意するを要す、注意は知識を進め、興味を増し、失敗を防ぐを得べ し、殊に登山に於いては、岩石、草木、動

    物等の觀察に於て、一段の注意を要するものなり

    登山のことに興味を持って知識を広めると失敗が少なくなります。特に山では自然観察も大事なことです。